涙、あと車の音

とにかく眠気が酷い。いくら寝ても眠気が取れなくて、視界と思考をぼやぼやさせていたらいつのまにか年が明けていた。久々に会った恋人の胸でならぐっすり眠れるなんてこともなくて、彼の少し控えめないびきを数えながらまた生ぬるい眠りに入る。

手を握って眠るのが好きで、その手が暖かければなお良くて、彼は手足がとっても暖かいしいつも嫌がらず握らせてくれるから好き。丸まった背中を後ろから抱きしめて手を握るといつも涙が出そうになって、「なんだか泣いちゃいたくなるくらいきみのことが好きなんだよね」と正直に伝えると泣かないでよと笑われた。彼はわたしが泣くのが嫌いらしい。

 

わたしは泣くのって好き。涙がこみ上げるとき頭の内側のちょっと前寄りがじんじん熱くなる感じが気持ち良くて、好きだなんて甘ったるい感情で涙を流せるのなら上等だろうと思う。しばらく泣いていないと頭に熱がこもってくらくらする。ここから出してとわたしの涙が泣いている。

 

わたしはけっこう泣き虫で、小さい頃から本当にすぐ泣く子だった。特に感情が昂って自分の中で自分の思考に整理がつかないと悔しくて勝手にぼろぼろ涙が出るのだけど、そうでなくて本当に全然しょうもないことでもすぐに泣いてしまう。たぶんわたしの涙は「お腹すいたー」とか「痛い!」とか「やったあ」とかいう言葉と同じくらい自然に出るもので、本当に疲れているのに満員電車に乗らなきゃいけないとか、遊んでいたらベッドから落ちちゃったとか、インターネットで買ったリップが届いたら違う色だったとか、そういう本当にちょっとしたことで簡単にうるっとくる。病気なのかな?病気なのかもしれないな。

 

そういう自分はべつに嫌いじゃないんだけど、涙というものは人に見られたとき様々な意味を持ちやすいものであるから、やたらと泣かないようにしようと設定した2020年の目標は「あんまり泣かない」。

さっき帰省のためのバスに乗り込む恋人を見送ったあと、お風呂に入って髪を乾かしていると急に鼻の奥がツンとしてじんわり涙が出てきたので慌ててドライヤーで蒸発させた。今生の別れでもないのに何がそんなに寂しいんだろうとすこし考えるとなるほど生理前だ。生理が近づくと怒りっぽくなるだとか倦怠感が強くなるだとか人によって色々あるけれどわたしは本当に涙もろくなってしまう。納得したところで涙は引っ込まず、溢れた一粒がドライヤーの風に追われて、雨の日の車窓で追いかけっこする雨粒みたいにわたしの頬を逃げ回った。

 

ひとりで布団に入ると手が冷えて眠れない。自分で自分の手を握ると冷たくてカサついているのが悲しくてまた少し泣きそうになった。冬が来てからずっと身体が乾燥している気がする。「あんまり泣かない」は早々に挫折してしまった。しょうがないので「いっぱい水を飲む」を新たな目標に設定しようと思う。たくさん水分取るんだからそれがちょっとくらい溢れてきても怒んないでね。